番外編・ねがいごと

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(手紙……?)  怜はテープをゆっくりはがして封筒の中身を取り出した。一枚の便箋には一司の字でこう書かれていた。 『メリークリスマス! オレは怜のことを自分の子のように思ってる。だからさみしがる必要はない。神谷も同じ気持ちだ。オレ達はもう、家族だ。これからもずっと一緒に、楽しい思い出をたくさんつくっていこうな」と。 「……っ!」  瞳が滲み、涙がじわりと溢れた。それを隠そうと、咄嗟に下を向いたが駄目だった。 (どうしよう……こんなの、泣いちゃうよ)  一司は手紙の返事をちゃんとくれたのだ。たくさんの愛情を込めて。  涙が止まらない。ポタリポタリと大粒の雫が膝の上へと落下し、ズボンを濡らした。  一司は全部わかってくれている。神谷もそうだ。怜の気持ちを全部知って、受けて止めてくれている。今はじめて、心からわかったたような気がした。 「それではサンタさんとトナカイさんとは、ここでお別れでーす! みんなで、ありがとうございましたって大きな声で言いましょう~。せーの……」  田島の号令に児童全員が元気いっぱいに「ありがとうございました」と声を揃えた。 「あっ……!」  反応が遅れてしまった。サンタに化けた一司とトナカイに変身した神谷は、手を振りながら部屋を去っていった。 (……帰っちゃうっ!)  ガタンと椅子を鳴らして席を立った。 「怜くん、どうしたの?」  訝しむ拓望をそのままに、怜は部屋を飛び出して二人を追い掛けた。
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