番外編・ねがいごと

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「泣くなよ……死ぬほど寂しくなったら電話しろ。絶対会いに行く。その寂しい気持ちを我慢するな。怜は俺と神谷にとって大切な存在なんだ……愛してるよ……」  抱き付く怜の肩に両手を置いて、しっかりと瞳を合わせながら伝えた。有りっ丈の愛情を注いだ。 「っ……か、一司さ……んっ、いいの? 神谷さんも、家族って、思って……いいの?」  しゃくり泣きながら怜は一司と神谷を交互に見つめた。 「あたりまえじゃない……ほら、もう泣かないで。あたしもかずちゃんも、怜くんのこと、ずーっと見守ってるから、安心しなさいよ」  腰を折った神谷が怜の柔らかな髪をくしゃくしゃと掻き撫でた。 「か、神谷さ、ん……うん、うんっ……」  安堵したのだろう。怜の顔はやっと笑顔を取り戻した。 「一司、さん……って本物の……サンタクロース、みたいだ。欲しい、物も、気持ちも……全部、くれる……神谷、さんも……俺、二人が……大好き!」  うまく回らない口調でも、怜は懸命に言葉を紡いだ。涙を誘う。一司は今にも泣きそうなのを我慢して、気持ちを返した。 「俺も怜が大好きだよ……」 「あたしも怜くんが大好きよ……」 怜を抱く一司ごと、神谷は包み込むようにして両腕を回した。 「一司……さん、神谷、さん。ありが、とう……家族に、なって、くれて……ありがとう」  細い腕をうんと伸ばして、怜も一司と神谷に抱き付いた。  三人して抱き合うと、それぞれの温もりが伝わってきた。心の繋がりを実感した、愛に溢れた抱擁だった。  血の繋がりはなくとも、家族以上の絆を築ける。確かに戸籍の繋がりはない。世間から見れば、家族でも何でもないだろう。それでも『出会い』から生まれたこの絆は、誰にも壊されないほど強い。  その絆を三人で確かめ合ったクリスマスは、怜にとって、生涯忘れられない日となったに違いない――。
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