番外編・ねがいごと

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「是非、見てちょうだい。身に着けてくれたら嬉しいわ」  両手を合わせて神谷は微笑んだ。  包装を解いていくと、黒地の布が小さな箱に折り畳んだ状態で収まっていた。 (ハンカチ……? 違うか)  薄い生地が表面に見えた。一司は箱からそれを取り出したが……。 「げっ……!」  手にして開いた瞬間、叫んだ。  それは男性用のセクシー下着だった。サイドは紐で結ぶタイプとなっており、薄い生地は中心部を覆う部分だった。メッシュを使っているのだろう。履くと透けて見えるほどの薄さだった。とにかく全体の面積が小さい。尻など半分以上晒すことになる。 「素敵でしょ? 通気性も抜群だし、いい素材使ってるのよ!」 「っ……バカ野郎っ! こんな恥ずかしいもん、はけるかよ!」  こんな公衆の面前で開けてしまったことを後悔した。慌てた一司は両手で下着を丸め、コートのポケットにしまった。 「そんなこと言わないでよぉ。プレゼントのお返しは、それをはいてくれるだけでいいから! ああ、かずちゃんがそれをはいてるって思うだけで、あたし興奮しちゃうっ」 「お前なあ……何考えてんだよ」  鼻息を荒くする厳つい恋人に、呆れて腕を組んだ。 「何って、いつもかずちゃんの事しか考えてないわよ」 「っ……」  熱い眼差しで当然のように返された。聖夜の中、二人はまじろぎもせずに見つめ合った。
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