番外編・ねがいごと

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「……かずちゃんは、またそうやって一人でベラベラ喋って……困るよ」 「っ……」  耳元で囁く声も温かかった。一司は瞼を震わせた。  神谷は抱擁を強めながら言った。 「俺が反対するわけないだろ。一年半なんてあっという間だ。だから思う存分、頑張れよ……人生は、悔いなく生きたほうがいい」 「神谷……」  そんなことを言われたら愛しさが込み上げて、抑え切れなくなる。一司は神谷の大きな背に腕を回した。 「かずちゃん、愛してるよ……応援してる」 「ありがとう……俺も、愛してる」  多くの人が行き交う中、二人の抱擁は深まった。男同士でも恥じることはない。一司は顔を上げて視線を搦めた。神谷の唇が近付く。触れる直前、彼は躊躇いがちに尋ねた。 「……いいの?」  人目を言っているのだろう。 「バカ、気にしなくていいんだよ……」  一司から唇を合わせた。周りの声も反応も、どうでもいい。神谷と触れたかった。口付けを交わすなか、遠くの方からキリスト生誕を祝う音楽が聞こえてくる。 「かずちゃんなら、個性的な福祉司になりそうね」  そっと唇が離れるのと同時にクスリと笑われた。 「それ、褒めてんのか?」 「もちろんよ」 「はっ、どうだか……」  鼻先をくっつけながら二人して笑い合うと……。 「かずちゃん、メリークリスマス」 「メリークリスマス……」  もう一度、唇を重ねて愛を誓いあった。  一司は切に願う。これから先もずっと、神谷と一緒に歩んでいけるように。怜の人生が幸せに溢れたものになりますようにと――。 ねがいごと・終 次ページで、次の番外編に触れますのでお読みください☆
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