番外編※二人で眺める朝焼けに

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 児童福祉司の資格を取ると決めてから一年と少し。一司は無事に資格認定講習を終え、翌年四月に修了証を受け取った。  仕事と勉強の両立は多忙を極めたが、一司にとって充実した一年となった。はじめて目標に向かって全力で走り切った。これでやっと進める。一司は固く決意していた。神谷との関係を両親に報告し、同居の許しを得ようと。 「お父さんとお母さんに、大切な話があります」  資格を所得した翌日。  仕事から帰宅した一司はリビングのソファで寛ぐ両親へと声をかけた。緊張のせいか、つい神妙な面持ちとなってしまった。何かを覚ったのだろう。父は厳しい顔で頷き着席を促した。母も強張った表情をしていた。そんな二人に一司は神谷との交際を明かした。怜の事も語った上で、児童福祉司の資格を取ろうと思った動機を伝えた。   話を全て聞いたあと、父は口を開いた。 「反対はしない。お前の決めた人生だから好きにしなさい」と。  神谷との交際を認めたということだ。 「お父さん……すみません」  感謝より先に謝った。 「どうして謝るんだ?」  問われて一司は心情を吐露する。 「……離婚のこともあるけど、あれだけ同性愛を否定して、一哉と橘にも酷いことをしたから……。そんな俺が、同じ男を好きになって……」  そこまで言ってから言葉は止まった。  兄弟揃って選んだ相手が男。再婚を願っていた両親の気持ちを思うと申し訳なさが込み上げてきたのだ。 「なんだ……そんなことか。お前にしたら妙な気遣いだな。別に男を好きなってもいいじゃないか。お母さんもそう思うだろ?」  心配を余所に父は笑い声をあげて、隣に座る母へと同意を求めた。
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