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「そうね……人を愛する形は様々あるという事は、理解出来るようになってきたわ。一哉も幸せそうだし……」
笑いはしなかったものの、彼女は同性愛に対する嫌悪は見せなかった。おそらく、一哉と結人の姿を見て価値観が変わったのだろう。理解のある両親に一司の胸はジンと熱くなった。
父は語る。
「一司が悔いなく生きる道なら、それでいい。孫のことは気にするな。智史と陽菜には時々会えているし、何より自分の息子が幸せならそれでいい。別に子孫を紡ぐ事だけが人間の役目じゃないんだ……」
そう言いながらでも、親として複雑な気持ちは消えないだろう。それは母も同じに違いない。
実子である智史と陽菜は、血の繋がりはあっても戸籍上では倉林家の孫となる。二人は今後、大槻家としての孫を見ることはない。それでも一司は神谷と生きていく選択をする。例え、反対されても勘当されても、最終的にはその道を選ぶつもりでいた。だが、両親は一司の生き方を尊重し、背中を押した。
「でも、意外だったわ。一司が男性を好きになるなんて……」
ここで母がポツリと本音を漏らした。
「すみません……」
やはり心の底では認められないのだろうか。俯く一司に母は首を左右に振った。
「違うのよ……一司は一度結婚した身でもあるから驚いたの。そんなあなたが、性別を越えてまで好きになったのが、その神谷さんなのね?」
ストレートな質問に一司は力強く頷いた。
「はい……好きになったのがたまたま男性だった……彼の全部にどうしようもなく惹かれました」
正直に伝えると、母は頬を緩めた。
「あなた、一哉と同じ事を言うのね。やっぱり兄弟ね……」
「え……そう、ですか?」
一哉に対しての苦手意識は消えない。一司はピクリと眉を動かした。
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