番外編※二人で眺める朝焼けに

3/25
前へ
/267ページ
次へ
「そうね……人を愛する形は様々あるという事は、理解出来るようになってきたわ。一哉も幸せそうだし……」  笑いはしなかったものの、彼女は同性愛に対する嫌悪は見せなかった。おそらく、一哉と結人の姿を見て価値観が変わったのだろう。理解のある両親に一司の胸はジンと熱くなった。  父は語る。 「一司が悔いなく生きる道なら、それでいい。孫のことは気にするな。智史と陽菜には時々会えているし、何より自分の息子が幸せならそれでいい。別に子孫を紡ぐ事だけが人間の役目じゃないんだ……」  そう言いながらでも、親として複雑な気持ちは消えないだろう。それは母も同じに違いない。  実子である智史と陽菜は、血の繋がりはあっても戸籍上では倉林家の孫となる。二人は今後、大槻家としての孫を見ることはない。それでも一司は神谷と生きていく選択をする。例え、反対されても勘当されても、最終的にはその道を選ぶつもりでいた。だが、両親は一司の生き方を尊重し、背中を押した。 「でも、意外だったわ。一司が男性を好きになるなんて……」  ここで母がポツリと本音を漏らした。 「すみません……」  やはり心の底では認められないのだろうか。俯く一司に母は首を左右に振った。 「違うのよ……一司は一度結婚した身でもあるから驚いたの。そんなあなたが、性別を越えてまで好きになったのが、その神谷さんなのね?」  ストレートな質問に一司は力強く頷いた。 「はい……好きになったのがたまたま男性だった……彼の全部にどうしようもなく惹かれました」  正直に伝えると、母は頬を緩めた。 「あなた、一哉と同じ事を言うのね。やっぱり兄弟ね……」 「え……そう、ですか?」  一哉に対しての苦手意識は消えない。一司はピクリと眉を動かした。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1529人が本棚に入れています
本棚に追加