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駅近で築十二年。中古とはいえ、なかなかの優良物件だ。間取りは3LDKの五階角部屋。
リビングダイニングは合わせて14畳。そこから三枚扉で隔てた先に8畳部屋が一つ。玄関を入った廊下の両隣に5畳ほどの部屋が2つある。申し分ない広さだ。
両親への挨拶を済ませた後、二人はすぐに住居を探した。神谷が住む賃貸マンションで暫く一緒に住む道もあったが、話し合った結果、マンションの購入を決めた。一司も今年で三十五歳。将来を考えての事だった。そこで運よく見つかったのが、この物件だった。名義は一司だ。共同ローンを組むつもりでいたが、戸籍上、家族関係にない二人だ。それは出来ないと不動産会社の答えだった。
二人に年収の差はあまりないが、ここは公務員の一司のほうが借入金額も多く、金利のほうも若干低い。勤続年数や、その他諸々を見ての結論だった。審査を通す前、神谷はやっぱり自分がローンを組むと申し出たが、一司は断った。二人で歩んでいく覚悟を示したかったのかもしれない。それからとんとん拍子に事は進み、先月に契約は成立した。
「ねえ、かずちゃんのノートパソコン、書斎に置いておいたわよ」
リビングとなるメインルームから神谷の声がする。
「おお、サンキュ」
呼ばれて、寝室から顔を出した。
「どう、そっちは片付きそう?」
「全然。これ、今日中には無理だぜ」
額に滲む汗を手の甲で拭った。大きなダブルベッドの周りは、たくさん段ボールが山を作っていた。
「無理じゃなくてやるのよ! そうじゃないと今夜はベッドで眠れないわよ」
神谷も寝室へとやってきた。
「わかってるって。うるせーなぁ」
小言を漏らしながら一司は衣類の入った箱を開けていく。神谷もそれを手伝い、壁付けのクローゼットに二人分の服を納めていった。
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