番外編※二人で眺める朝焼けに

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「そうだわ。もうすぐお昼だけど、どうする?」 「適当でコンビニで済まそうぜ。近くにあっただろ?」 「そうね。そうしましょうか」  横に並びながらハンガーパイプに秋冬用のコートやジャケットをかけていく。 (なんか、こういうの……いいな)  他愛もないやり取りに幸せを感じた。  今日からこの部屋で、神谷とともに歳を重ね生きていくのだ。喜びを噛みしめながら一司は笑みを溢した。 「どうしたの?」  微笑む一司を不思議がったのか、神谷が首を傾げた。 「いや、やっと一緒に住めるなって思ってさ……嬉しいよ」  素直に伝えて神谷の肩にコツンと頭を預けた。 「やだ……そんな可愛いことしないでよ」  一司からの甘えは珍しい。神谷は頬を染めてあたふたとし出した。 「お前は嬉しくねぇの?」  口を尖らせて頭一つ分高い、年下の恋人を見上げた。 「そんなの……嬉しいに決まってんだろ」 「っん……」  魅惑的な雄の声と一緒に唇が落とされた。一司はそれを受け入れて、逞しい首へと両腕を巻き付けた。 (熱い……)  新しく取り付けたエアコンは稼働しているものの、引っ越しの片付けに追われた身体は汗だくだ。密着した胴体からは更に汗が噴き出た。それでも二人は構わずに唇を吸い合って抱擁を深める。汗の香りも一段と濃く搦まった。 「かずちゃんったら……盛っちゃって」  汗で湿った首筋に唇が寄せられた。 「ん……バカ。そんなんじゃねーよ。おい、舐めるな……っん」  喉仏から首筋のラインをベロリと舐められた。汗を舐め取るような動きに一司は腰を小さく反った。
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