番外編※二人で眺める朝焼けに

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「へえ、なかなかいい部屋じゃないか。陽当たりもいいし」  結人とともにリビングへとやってきた一哉が、明るい空間へと視線を巡らせた。 「うん……素敵だね」  頷いた結人がベランダへと続く窓際に移動する。一哉もそれに続いた。二人は肩を寄せ合って街の景色を見下ろした。 「……おい、誰も手伝いなんて頼んでないだろうが。あと、いちゃいちゃするなら、とっとと帰れ」  呆れた一司は腕を組んで、弟カップルへと言い放った。 「もう、かずちゃんったら、随分な挨拶ね。あたし達もさっきまで、いちゃいちゃして……ふがっ!」  余計なことを言うなと、無言で神谷の口を掌で覆った。 「ああ、もしかしてお邪魔でしたか?」  しかし、一哉の反応は早かった。彼は扉の先にある寝室へと視線を送ると、ニヤリと口端を上げた。 「っ……違う! 変な事を言うな!」  即座に否定したが、何もかもお見通しなのだろう。クツクツと笑われた。この弟の、こういうところが、いけ好かない。    一司は半ば八つ当たり的に結人を睨んだ。なんとかしろと言った意味も込めた。すると結人はハッとしたように携えていた鞄から何かを取り出した。 「あの、これ……お兄さんと神谷さんに。一哉と俺から……」  彼は袱紗に包んであった熨斗を神谷へと手渡した。引越し祝いだろう。
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