番外編※二人で眺める朝焼けに

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「やだ、そんなのいいのに……」  遠慮を覗かせる神谷に結人は言った。 「だって、二人のこれからを祝いたかったから……ね? 一哉」 「ああ、だから受け取ってくれ」  一哉も頷いて新たな出発を祝った。 「一哉さん、結ちゃん……本当にありがとう」 「……まったく、そんな気を使うなよ」  言葉こそぶっきらぼうだが、神谷に続いて感謝の気持ちを表すと、一哉が優しい笑みを浮かべて言った。 「弟として、兄さんの幸せをずっと願っています。これからもよろしく」 「……っ」  こんな時、返す言葉がわからない。一司はつい照れ臭くなってフイと顔を背けた。 「兄さんも一世一代の買い物で要り様だったでしょう? でも、お返しは期待してますよ」 「ちゃっかりしてやがるな。言っとくけど手伝いはしてやらねーからな!」  来年の春、一哉と結人は現在建築中の分譲マンションへの引っ越しが決まっている。その見返りを求められたというわけだ。 「ええ、それは期待していませんけど……」  そこまで言ってから一哉は口を閉ざして、一司の姿をジッと観察した。 「な、何だよ……文句でもあるのかよ」 「いえ、兄さんが着ているハーフパンツ……今にもずり落ちそうですけど、サイズ合ってます?」 「っ……⁉」  慌てて下半身を確認すると、際どい腰のラインまで衣服がずり落ちていた。 「……サイズを間違えて買ったんだよ!」  言い訳をしてウエスト部分を折ると、神谷が噴き出して笑った。 (コイツ……!)  誰のせいでと、顔を真っ赤にしていると……。 「なるほど。やっぱり、お邪魔してしまったようで……」  そう呟いてから一哉はすみませんと、付け加えた。そして片付けの最中、彼は一司に耳打ちした。 『下着、はかないんですか?』と――。
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