番外編※二人で眺める朝焼けに

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*** 「まったく……あいつら急に来やがって、こっちの都合はお構いなしかよ」  夜九時。綺麗に片付いたリビングのソファに腰掛けた一司は、缶ビールを片手に文句を吐いた。あいつらとは、もちろん一哉と結人のことだ。 「いいじゃないのよ。お陰でスムーズに片付いたじゃない」  シャワーを浴び終えた神谷が、濡れた髪をタオルで拭きながら隣へと座った。 「そうだけどよ……来るならひと言ぐらい言えよな」  確かに、予定より早く荷物を片すことが出来た。  あれから四人で手分けし、全ての部屋を整理した。意外だったのは結人の手際のよさだ。鈍臭そうに見えたが、整理整頓が得意なのだろう。テキパキと動いては、あの一哉に指示を出していたほどだ。 「相変わらず素直じゃないわね。本当は嬉しかったくせにぃ。しかも一哉さんと仲良くじゃれ合ってたじゃない」 「なにが仲良く……だ。あいつはな、俺のことを完全に揶揄って、見下してんだよ!」  下着の一件は思い出すだけで腹が立つ。一司はビールを一気に流し込んだ。 「でも来てくれてよかった……でしょ?」  一司の口から『うん』と言わせたいのだろう。神谷は首を傾げながら横から顔を覗いてきた。 「……うるせーな。その話はもういいだろ」  肯定はしない。ただ、否定もしない。 「ふふっ、可愛いんだから。あたし達も一哉さんたちの引っ越し、手伝いに行きましょうね」 「嫌だな。めんどくせーから、金だけ渡そうぜ」  そう言って、空になったビール缶をサイドテーブルの上に置いた。
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