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(仲良く……か)
どうやら神谷にはそう見えたらしい。さっき言われた言葉がやけに響いた。
一哉に対しての苦手意識は変わらないが、以前に比べたら関係は良好だ。それは認める。そもそも、確執が深かっただけに会話らしい会話をしたのは、ここ数年だ。
(神谷と再会してからだな)
俯いて髪を拭く恋人へと横目を送る。バーで再会した夜を思い出して、一司は静かに微笑んだ。
早いものだ。彼と会ってから、一司の人生は大きく変わった。価値観も、生き方も、概念も、全部。何より愛という感情を知った。
「どうしたの、かずちゃん。ニコニコしちゃって」
「ん? 今日まで色々あったなって、思い返してただけ。あと一哉への仕返しも考えてた」
「またそんな事を言って、それだからお兄ちゃんなのに、弟扱いされんのよ」
やれやれと嘆息を漏らされた。
「それ、あいつが老けてるって言いたのか?」
「確かに一哉さんは年齢のわりには……って失礼なこと言わせないでよっ!」
「じゃあ、アプリトークで送っておいてやるよ。神谷が一哉のことジジイみたいだって言ってた……ってな」
一哉の苛立った顔が目に浮かぶようだ。一司は悪戯っ子のように笑うと、テーブルに置いてあったスマートフォンへと手を伸ばした。
「ちょっとぉ、そこまで言ってないでしょっ!」
それを阻止しようと神谷が一司の腕を掴んだ。
「おっと……!」
サッと避けるつもりが、一司の身体はそのまま押し倒された。手にしたはずの端末は小さな落下音を立てて、床の上を滑っていった。
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