番外編※二人で眺める朝焼けに

22/25
前へ
/267ページ
次へ
「かずちゃん、全然止まんない……足りないわ」 「んっ……俺も。だって、今夜はいっぱい、くれるんだろ?」  繋がったまま、腰をズリズリと動かした。もっと愛して欲しい。もっとこの男の欲情を直で感じたい。それだけだった。 「ああ、そうだよ……覚悟しろよ」 「っは……んんっぅ」  噛み付くような口付けを合図に、抜かずの情交ははじまった。  寝室が静寂を取り戻したのは、五ラウンド目が終わったころ。三時間後の事だった。 *** 「ん……」  小さな声を漏らしながら、一司はゆっくりと意識を覚醒させた。目蓋を開くと、見慣れない天井が映り込んだ。 (ここ……は……)  何処だと自己に問う前に、昨日、引っ越したことに気が付く。 「……おはよ、かずちゃん」  真横から声がした。そろりと首だけを向けると、神谷の顔がすぐ傍にあった。 「……今、なん……じ?」  目を擦りながら掠れ声で尋ねた。 「朝の六時半よ。よく眠れた?」 「なんだよ……まだ全然朝じゃねーか」  大きな欠伸をしながら二度寝の体勢に入った。  お盆休みは明後日までだ。引っ越しと昨夜の激しい情交で疲弊した身体を休ませることが優先だ。一司は瞳を瞑ったが……。 「かずちゃん、見て……綺麗な朝焼け」  ベッドから身を起こした神谷が窓際へと足を進めた。  促された一司は気だるげに寝転びながら、窓の向こうの空へと視線を送った。 (……あ)  綺麗だ。美しい朝焼けに思わず瞳を瞬いた。眠気は飛んだ。一司は素裸の身体を隠すように、傍に置いてあったサマーブランケットを羽織ってベッドから出た。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1529人が本棚に入れています
本棚に追加