番外編※二人で眺める朝焼けに

24/25
前へ
/267ページ
次へ
「お母さんなら、絶対にかずちゃんとの事を喜んでくれるから……安心して」  一司の想いを汲み取ったのだろう。正面から包み込むような抱擁を受けた。 「田舎はね、冬は寒いけど、とっても海が綺麗なところよ。その海が一望出来る旅館に泊まって、海の幸を存分に食べて、旅行気分で楽しみましょ」 「……ああ、楽しみだ」  大きな胸に顔を埋めて涙を隠した。 「あと、大切な事忘れちゃダメよね」 「大切なこと?」  徐に顔を上げると、神谷は言った。 「怜くんよ。だって、かずちゃん怜くんを早く家に招待したいって言ってたじゃない」 「そうだな……もちろん覚えてる」  自分を変えた少年を想い、一司は目を細めた。  怜も五年生となった。  施設ですくすくと育ち、優しく、利発な子に成長した。後遺症のリハビリも頑張って続けている。そんな怜を我が子のように想い、今も関わり続けていた。  二人にしては広いこの部屋を決めたのは、実は怜の存在も大きかった。  いつでも彼が、遊びにきてもいい状況と環境を整えてあげたかったからだ。何年経っても、何歳になっても。 「将来が楽しみだな……怜が大人になっても、ここに来て、俺たちに会いにきてくれたら嬉しいよな」 「そうね。ふふっ、楽しみ」  未来を思い描いて笑い合うと、二人は朝の光を浴びながら唇を重ねた。  今日も深い愛情を受けながら一司は思う。  この神谷竜二という男は、自分にとっては朝陽のような存在だ。    どんな暗闇にいても、落ち込んでいても、毎日昇る旭日のように彼は光を照らしてくれる、最高に愛おしい男なのだと――。  二人で眺める朝焼けに 終 次ページに今後の「最悪の出会い~」に触れますのでよければお読みください。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1529人が本棚に入れています
本棚に追加