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「……どうかしました?」
何かありそうなニュアンスだ。一司は微かに眉を顰めた。
「あの子……あんなに小さいけど、多分小学三年生ぐらいじゃないかしら?」
「いやいや、そんなわけないでしょう」
すぐに否定して、今年六歳になるはずの智史の姿を再び鮮明に思い浮かべて怜と比べた。身長も体格も変わらない。三年生だとしたら九歳だ。どう考えても怜がその年齢だとは思えなかった。
「だって……その割に言葉遣いが大人びていたもの」
「ああ……そうだったかもしれませんね」
頷いた。男児は基本的に言葉の成長が遅い。智史もそうだ。どこか舌足らずで伝え方も下手だった。確かに怜のほうが、しっかりと言葉を紡いでいた。一ノ瀬の推察も納得できた。
「まあ、あれじゃないですか? 小柄な子ってことじゃないです?」
そう結論付けた。実際に平均身長に満たない子はいるからだ。
「……だといいんだけど」
何故か一ノ瀬の表情は晴れない。怜の後姿をずっと心配そうに見送っていた。
(気にしすぎだろ……)
いちいち構っていられない。呆れたように静かな溜息を吐いた。一司にとって怜は、ただの生意気な子供。それだけだ。
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