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弟、一哉の交際相手、橘結人は神谷の親友だ。
そんな大切な友人を陥れようとし、人を使ってまで暴行を依頼した。本当なら死ねと罵られてもおかしくない。優しくされる理由なんてどこにもない。
そもそも神谷が本当に一司を許しているのかも謎だ。これがもし復讐のひとつだとしたら……。
(俺はどうなる……?)
不安に似た感情が過ったが瞳を瞑って消した。そんな事はどうでもいい。許そうが許さまいが、いずれ、何の関係もなくなるのだから。
(関係が……なくなる?)
本当にそんな日が訪れるのか。自分に決断出来るのか。気が付いた時には神谷へと問いかけていた。
「……なあ、お前ってさ……どんな奴なんだよ?」
「どんな奴? それってどういう意味?」
不思議がった神谷が肩を揉む手を止めた。一司はそんな彼へと向き直った。
「どういう意味って……そのままの意味だよ」
「あらぁ? ようやくあたしのことが知りたくなったの?」
ニヤリと口端を上げられた。この揶揄いにも、もう慣れた。一司は鼻先で笑ってやった。
「捉え方を間違えるなよ。こっちは何もお前のことを知らねーんだ。そういうのってフェアじゃねーだろ」
聞きたいとは言わない。対等な関係をアピールした。
「まあ、言われてみれば、そうよねぇ。それで、何が知りたいの?」
理由に納得したのだろう。神谷が答える意思を見せた。
「何って……出身地とか? 大体お前ゲイとして生きてて、恥ずかしく思った事ないのか?」
配慮が欠けていると思われてもいい。直球な疑問をぶつけた。
神谷は少しの間、黙り込んだあと、ゆっくりと口を開いた。
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