※戸惑う再会

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(鬱陶しい奴……)  いちいち反応するのも面倒だった。浴室に行こうと二人に背を向けた時だった。 「一司、ちょっと待ちなさい。こっちに座りなさい」  父が呼び止めた。これには逆らえない。無言で足を止めた一司はクルリと振り返ると、一哉とは一定の距離を置いてソファへと腰を下ろした。 「……昨日のことなら反省していますから」  どうせ昨夜の説教だろう。それなら先に謝り勝ちだ。  だが、父からの返しは一司の想像をはるかに超えていた。 「これから智史と陽菜が遊びに来るから、今日は一司も顔を出しなさい」 「……はぁ!?」  目を丸くして声を上げた。  面会は基本的に日曜日で月一回と決まっている。今月は来週の予定だったはずだ。一司に会う選択はない。適当に外出するつもりだった。 (それで一哉(こいつ)が来てるのか……)  姿を見た瞬間に察すればよかったと一司は後悔した。しかしと、考え直す。  面会については両親も今まで無理強いしてこなかった。万里子のほうも、実の父親である一司に必ずしも会わせる必要がないと考えているのだろう。要求はなかった。誰もが皆、一司の状況や子供に対する態度を知っているからだ。会ってもいい影響を与えない。一司はそう解釈していた。だったらそれを貫こう。 「お父さん。俺は遠慮しておくよ。子供たちも俺なんかに会っても嬉しくないだろうし……」 「そうだとしても、お前は智史と陽菜の父親だ。離婚してもうすぐ十カ月だろう。一度くらい二人の成長をその目で見てやりなさい」  父は引かなかった。何とか逃げ切れないか。方法を考えるが二日酔いの頭が思考の邪魔をする。もう正直に伝えた方が早い。 「俺はあいつらの成長に興味ないって……っ」  ストレートな言葉はここで止まった。父と一哉が哀れみの目を送ってきたからだ。
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