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「な、何だよ、その目は……?」
軽蔑の眼差しより居心地が悪い。狼狽える一司に一哉が口を開いた。
「お父さんから、少しは心を入れ替えたようだと聞いていましたけど、結局は何も変わっていないのですね」
重い嘆息を漏らされた。
「何だと!?」
馬鹿にするなと、勢いをもってソファから立ち上がった。それでも一哉は責めてくる。
「あれだけの事をしておきながら、甘い処罰で済んだのです。もしかして、人からの優しさを当たり前と思っていないですか?」
「おい、それ以上言うなよ……」
両手を強く握り締めた。敗北感とともに込み上げるのは屈辱だった。
一司は改めて強く思った。こんな弟、死ぬほど大嫌いだと。
「二人ともやめなさい」
険悪なムードが漂ったところで父が静かな声で諭してきた。重みがあった。これ以上は彼の逆鱗に触れる。二人の息子はすぐに従い、お互いから視線を逸らした。
「……とにかく俺は絶対に会わないからな」
言い切った時だった。騒がしい声とともにリビングの扉が開け放たれた。
「はーい、智史くんと陽菜ちゃんが、やって来ましたよ~」
母だった。上機嫌な彼女の後ろには智史と陽菜の姿があった。
「っ……!」
どうやら遅かったようだ。一司はそのまま硬直した。
「おじいちゃん、一哉おじちゃん、こんにちは!」
「こんにちは! 元気だった~?」
元気な挨拶とともに二人はリビングへとやってきた。目の前の我が子に一司は言葉を無くしつつも瞠目した。記憶の残る姿より成長が見られたからだ。
智史は身長が伸びた。眉や目の形が幼少期の自分とそっくりだった。陽菜も大きくなったが、それより髪が伸びた。更に女の子らしくなった。子供の成長の早さを初めて知った。一司は茫然と立ち尽くした。
「えっ……パパ!?」
ここで智史が一司の存在に気付いた。
「ほんとだ……パパだわ!」
続いて陽菜も反応した。久々の父親に吃驚したのだろう。二人は円らな瞳を更に大きくした。
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