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「ちょっと、こっちに来てちょうだい」
大きな腕が肩に回った。二人の身体は自然と密着した。
「おい……っ!」
人前だと一司は身を捩って抵抗したが、結局そのまま、店の奥にあるスタッフルームに連れて行かれた。部屋に入った途端、神谷は後ろ手に鍵を施錠した。
「一体、何なんだよ……こんなところに連れ込んで……」
十畳ほどの空間へと視線を巡らせた。
壁際にはロッカーが並んでいた。部屋の中央には休憩用のソファとローテーブルがひっそりと配置されている。
「なあ、黙ってないで何とか言え……っ……んぅっ!」
それは突然だった。壁際に追い込まれたかと思いきや、唇を塞がれたのだ。見開いた目には神谷の顔がいっぱいに映っていた。
「んんっ……ぅ」
口づけはすぐに濃厚なものへと変わった。唾液を搦めた舌が一司の咥内を満たし、意志を持った生き物のように厭らしく蠢き出した。
(こんなところで……っ)
盛るなと言いたいが、みっちりと合わさった唇がそれを許さない。
いや、例え自由に言葉を発せても、今の一司に口づけは拒否できない。日を空けた触れ合いは怖いくらいに甘く、鋭利な感覚を呼んだ。
(ああ、クソ……気持ちいい)
舌と舌の摩擦が強まる度に、腰が抜けそうだった。抵抗はもうなしだと、一司は神谷の首に腕を巻き付けた。嬉しいとかじゃない。欲の発散だと言い聞かせながら。
一司の動きに応えるようにして神谷も動いた。両頬をグッと掴まれ、顎の角度が上がったのだ。
「んっ……ぅう!」
口の力が緩まり、長い舌が喉奥へと到達した。ここを舐められると駄目になる。わかっていながらも一司は獰猛な舌遣いを受け入れて、震える両手を神谷の頭髪へと絡ませた。それを合図に、捻じれるほど二人の唇が重なった。卑猥な唾音が奏で合う。
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