※認めない

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 口の力を抜いた途端、分厚い舌が一気に侵入した。唾液が絡み出したのを合図に柔い摩擦がはじまった。 (ああ、クソ……痺れる)  神経が甘くヒリついた。神谷は性の施しもなかなかのテクニックだが、口づけも上手い。  関係が始まった当初、深く唇を合わせることが苦手だった一司だが、今では自ら口を開けて、滑り込む舌を待つようになった。  どうせ抵抗しても、無理くりに口内を舐め尽くされる。それなら最初から無駄な力を使わずに享受したらいい。神谷に惚れているとか、そんな理由ではない。ただ気持ちいいからだ。 「んっ……ふっ、んん」  長い舌が上顎や歯列、喉奥までも舐めてくる。一頻り、蹂躙されたあとは根元から抉るように舌を搦め捕られる。食い尽くす動きは獰猛で野性的だ。それでも優しさが垣間見える舌遣いだった。呼吸が難しくなってくると、神谷は必ず口の力を緩めて酸素をくれる。今もそうだ。一司が呻くと、緩やかな口づけへと変わる。 (慣れてやがる……)  経験の豊富さを、こういう時に知ってしまう。神谷は男の感じるところを熟知しているのだ。表現するには難しい感情が湧き上がったところで、脇腹を撫で繰られた。 「っん……ぅ!」  喉の奥で呻くのと同時に手が胸部へ移動した。膨らんだ胸粒を指腹でツンと突かれた。 「ふっん……っ!」  たったそれだけで刺激が駆けた。一司は思わず腰をくねらせた。胸からの快感も神谷から知った。女ならまだしも、男でも感じるのかと。ここを弄られる行為も、最初の頃はなかなか受け入れられなかった。しかし、いつの間にか性感帯のひとつとして認識し、会う度に神谷から愛撫を受けている。
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