願い

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雪が...音もたてずに積もっていく...。 儚くてとても悲しい...。 そう感じるのは、今の私の気持ちが悲しいからだろうか。 雪が積もり、人が歩けば足あとがつく... ついた足あともやがて消えてしまう。 私もこの雪のように、何も足あとすら残せないまま消えてしまうのだろうか。 いつもの日常が何も変わらず続いていくんだと、 命あるものには、終わりがあるのだと、 深く考えたこともなかった。 自分には、そんな話は無関係だと、疑いもしなかった。 前日まで、楽しくダンススクールで踊っていたし、体調は良かった。凄く元気だった...。 翌日に地獄へ突き落とされるとは知らずに...。 楽しい時間を過ごしたし、これからも自分がいる世界がキラキラ輝いているんだと信じて疑わなかった...。 翌日に、会社の健康診断があって検査してもらってわかったこと。 診断結果は『膵臓癌』だった。 「大山さん、検査の結果ですが...膵臓癌の末期です。とても言いにくいのですが、もって数ヶ月でしょう。」 そう先生から言われて頭が真っ白になった... 末期癌と聞いてから先生とは何を話したのかも覚えていない...。 膵臓癌は、見つけにくいものだそう。 運が悪かった...。それしか自分にかける言葉がなった。 それからは、早めに入院することになって 季節は夏から冬になろうとしていた。 病気のことは、家族には話していない。 こんな私の最後をみてほしくないからだ...。 私の最後は、私で決めて一人でいくことにしたから、家族には話さないことに決めた。 私が旅立った後に、困らないように、お葬式の手配など一人で全て準備した...。 入院する時には部屋はほぼ片付けて家を出た。 今まではなかったけれど、 もう少しで旅立つ日が近いと思うと 孤独と恐怖が押し寄せてきて怖かった。 夜になると、闇に包まれて、おちるところまでおちる。 一度踏み入れた闇は底なし沼で、もがいても、もがいても上がる事はできないように感じる。 どうしたらいいのかも分からない... 夜になるとそれは押し寄せてきて、私は暗黒の闇にのみこまれる。 こんなにも苦しい時にも、いつも、あの人の事を思い出してしまう...。 闇の中で、思い出すのは いつもあの人の眩しい笑顔。 『私が生涯、唯一愛した人。』 二人で過ごした日々。 もっと、もっと、こうしておけばよかった...。 ああしておけばよかった...。 唯一の私の心残り...。 あの人とは、気持ちのすれ違いで離れる事になった。 ほんの些細なことで溝がどんどん大きくなった。 もし、助かったなら... 1%でも助かる可能性があるのなら... 頑張って、たたかって、そして、 あの人に会いに行きたい... 会いたい... でも...その願いも...決して叶うことはないだろう 今、窓の外の雪をみて、考える事。 もっと足あとを残していけばよかった。 私は、あの人にも忘れられて...跡形もなく... 消えてしまうのかな...。 もっと残していけばよかった...。 私という名の足あとを...。
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