近づける、こと

11/12
前へ
/22ページ
次へ
「じゃ、また」  優利が先に降りる。 「……ああ、また、な」  また電車が動き出す。  俺は優利の姿が見えなくなるまで、窓の外を眺めていた。  ……今年は、もう一回くらいは会えるだろうか。  さっきまですぐ近くにいたし、今までもそうだったはずだ。  だけど今は、この距離に怯える。  この気持ちのまま近づくのは、どこまでなら許される?  スタジオで見たものを思い出す。  肩? 手首? 腕? 髪?  ……触れるのは、どれくらいなら、どこなら、自然だ? 知られないままでいられる?  ゆっくり息をする。  気づいてなかったら、きっと触れられてる。  でも触れたいと思うのは、気づいているからだ。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加