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手応えある上演に僕も紗姫ちゃんも上機嫌のまま楽屋に戻ると、観劇後の景斗が挨拶に来ていた。
『すごく、何だろう……感情、揺さぶられた』
景斗の感想に紗姫ちゃんは満足そうに笑った。でもあいつは、気のせいかもしれないけど、少し困ったような表情を返したのを覚えてる。
『……紗姫ちゃん、英語も話せるんだよね? 今度原文で上演しませんかって提案してみる?』
僕が冗談交じりに言ってみると、それ面白いかもね、と返事が返ってきた。
『でも彼女はオーストラリア人だから私の発音じゃおかしいね。やるにしても矯正訓練は絶対必要。あ、でも彼の発音監修は私、できるかも』
そのまま話が弾んでると、
『いいな……』
景斗の声がした。
『『え?』』
二人一緒にそっちを向いた。
『……いや、何でもない』
遠慮したような笑みで言われた。
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