近づける、こと

4/12
前へ
/22ページ
次へ
 接近戦だ。武器のリーチが短いから懐に飛び込んでいかないと攻撃はできず、距離を詰めようとするたび、相手がそれを防御するたび、腕がぶつかり合ったり掴まれたりする。  触れる度、そこに目が行く。  見始めて数十秒後、急に優利が何かに驚いたように顔を横に向けた。  目が合って、心臓が跳ねる。  ――景斗?  唇がそう動いた気がした瞬間、隙を見た短剣が襲いかかる。  危ない――  でも優利は攻撃を避け、思い切り相手の手首に打撃を加える。その衝撃に短剣は弾き落とされ、スタジオの床に転がる。  その瞬間の相手の焦りにつけ込み、容赦なく壁際まで追い詰めていく。  最後、優利が相手の喉元にナイフを突き付ける体制で、二人の動きが止まった。優利の口元に、勝利を確信した笑みが浮かぶ。  背中に痺れが走る。鼓動が速まる。  二人が同時に構えを解き、こっちを見る。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加