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「何勝手にやってるんだ」
JINさんが叱る口調で言いながら二人に近寄った。
「いいじゃないですか。ちゃんと全部できてたでしょう、JINさんがつけた手の通り」
優利が悪びれた様子もなく返す。
何だ……そういうことか。
本当に俺に注意を持ってかれたわけじゃなくて。
考えてみたら当たり前だけど、少し気分が沈む。
「ま、お前らなら下手に間違えて怪我したりはしないな。実際、悪い出来じゃなかった」
それは俺も思う。すごく、かっこよかった。
いや。かっこいいとかを通り越して、官能的なものさえ感じた。捕らわれたら逃げられないような、相手を食らおうとするような動きが、雄々しいと言うか野性的と言うか……
「ありがとうございます。僕たちがJINさん超える日も近いかもしれないですね」
なのに一人称が「僕」というギャップも何だ……
JINさんはニッと歯を見せて笑った。目を細めて、何かを懐かしむような、見守るような眼差しを向ける。
「バカ言え、そう簡単に俺より上に行かれてたまるか」
そして手を伸ばし、軽くはたくように優利の髪を撫でた。
俺の中で何かがざわついた。
「でも今度こそ終了だ。待ち合わせ、あるんだろ?」
その言葉に優利が俺を見た。
今度こそ、本当に、自分から。
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