近づける、こと

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「……え?」  ドキッとして包みを見た。  飾り付けの一つもない、ただの厚めの白いビニール袋だ。でも、これはつまり……  ん、とさらに促され、かじかんだ手で受け取った。くしゃっと、柔らかい。  逸る鼓動のまま中身を確認する。  深緑色のマフラーだった。なめらかで心地良い手触り。  温かそう。 「……何で」 「この前見つけて、似合うと思ったから」 「でも今日ってクリスマス……」 「うん、だからタイムリーだろ?」 「……」  待ってくれ。  思考がついて行かない。  それはどういう意味で言ってるんだ? 贈り物の季節だからなのか、それとも、もっと深い―― 「何そんな驚いた顔してんだ。何かおかしいか? 友達にあげるプレゼントの一つや二つ」
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