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「だってあの二人は言ったらまだ子どもなんだから、学校休みで家族で過ごしていても別に何もおかしくないだろ。向こうじゃ大人になっても毎年毎年この時期実家だよ? って補足したのは紗姫ちゃんだ」
「わかった。もういいよ、それは」
すると優利は呆れたように眉を上げた。
……ちょっと大人げなかったか。
なんとなく気まずくなって、静かなまま道を行く。
「……さっきの殺陣、さ。JINさん、あれ今度の共演の役を意識して考えたんだって」
また、優利が言った。
「へえ」
「だからかな……幸くんはもう本番さながらに役に入ってた気がしたな。まだ稽古も始まってないのに」
そう言って小さく笑う優利を見て、胸中に不穏なものを感じた。
幸くん。さっきのワークショップで一緒にいた先輩、澤木幸人……誰もが認める実力派で、彼も、わりに優利と仲が良い。
「そうか……」
反応がわからずなんとなく返した。
「……つまんないか、こんな話?」
「つまんないってわけじゃないけど……」
ただお前が彼や紗姫ちゃんの話をするのを聞きたくないだけ。
……なんて、言えるわけない。
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