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この並木道は、まっすぐ通り抜けると大人が歩いて5分とかからない。しかし、毎年沿道の銀杏だけでなく、その周りの銀杏も鮮やかにその身を飾る季節になると、まるで辺りは銀杏公園のようになる。
その景色を道から外れて楽しむことに夢中になり、思っている以上の時間を費やしてしまう人間は多い。
「わあああ!」
娘は感極まったように私の腕の中で足をばたつかせた。小さな腕を大きく振り回して、どこまでも続く銀杏並木を指さす。めいっぱいの光を、その青い眼に宿して私を見る。その眼に映る私は自分でも驚くほど優しい顔をしている。かつての私を知っている人間が見たらなんというだろうか。
「もう、みちが、まっきっきね!」
娘はまもなく四歳になる。毎年愛くるしいリアクションをしてくれるので、決まって誕生日が近づくと連れてきてしまう。初めて連れてきたときは意図して連れてきたわけではなかったが、口をぽかんとあけ、丸い目をさらに見開き辺りを見つめていた。その表情があまりにも新鮮だったものだから、つい柄にもなく散歩してしまったのを覚えている。もう三年近くになるのだ。全く。子供の成長というものはこんなに早いものなのか。
感慨に浸る間もなく、あっち、と腕の中の王女様が私に移動するよう指図する。
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