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「ーーーアンタさぁ、少しは働きなよ」 不機嫌そうなその声に、微睡んでいた意識を覚まし。 面倒ながらも、重い瞼を開けると。 呆れたように自分を見下す、真っ黒い姉の瞳が見えた。 「…………みっちゃん」 「アンタなんかに私の名前を呼ばれたかぁない。さっさとどいて。掃除の邪魔」 掃除、ねぇ。中はそんなに汚れてないと思うんだが。 そう伝えると、姉は更に不機嫌そうに眉を釣り上げた。 「……どうせ外には出られないんだから、掃除するか子守するしかないでしょ。アンタ掃除は下手くそだしやる気もないし、せめて妹たちの面倒くらい見なさいよ」 このタダ飯食らい。 あんまり寝てばっかでサボってると、お母様に言いつけるからね。 捨て台詞を吐くと満足したのか、彼女は汚れた手足を拭って部屋を出ていった。 狭い部屋には、あたし一人が残される。 外はどうやら、数年に一度と言われるほどの大雪らしい。 さっき、別の姉がそう話しているのを聴いた。 窓のないこの部屋からだと、外の様子は分からない。 自分には珍しいほどの俊敏な動きで、その場でひょいと身体を起こした。
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