殺人自動掃除機バリクリーン

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ピーン。『自動お掃除モード開始』    寝ぼけ眼で床を見るとバリクリーンのブルーに光る液晶が暗闇の中を右往左往して動いている。    なんだ。自動でお掃除してくれてるのか。    俺はそのまま2度寝を決め込もうとベットに横になると下からバリバリと、いかにもヤバいものを吸い込む音がして飛び起きた。すぐに電気を付けると掃除機はどうやらベットの下に行ってしまったようだ。     掃除を引っ張り出すと一緒にくっついてきた物を見て俺は節句した。    「俺のゲーム機!」    掃除機はあろうことか俺のゲーム機粉砕しながら吸い込んでいた。それはまるで怪物が獲物を補食してるように見えた。    俺すぐに掃除機の電源ボタンを押した。    だが掃除機は止まらない。それどころか今度は絨毯を丸呑みし始めた。    何なんだよこの掃除機!俺は部屋に置いてあるバットを手にしておもいっきり振り下ろした。    「このやろう!」    が、掃除機はびくともしないどころか、何か周りに見えない透明の壁みたいな物があってダメージを与えることができない。    掃除機は次に移動して俺の部屋を出るとリビングに向かった。そこでリビングに置いてあるものを片っ端から吸い込んでいく。いや、これは、もはや補食してるという表現が正しい。    絨毯、テーブル、ソファ、テレビ、次々バリボリと音を立て喰らう。俺はバット片手にポカーンとただ傍観することしかできなかった。    すると急に掃除機は動かなくなると、ピーン『排出モード』と喋りだし掃除機の後ろの蓋がパカッと開いた。その中から黒い砂のような塊が一気に排出され、その砂は無惨に今自分が綺麗?にしてきた床に散布された。    黒い砂がブワァっと舞い上がり砂嵐のようになって部屋中に舞い消えていく。    「こんな夜中になにやってるの」    その声に後ろを振り向くと、ぞろぞろと母に父、それに兄と弟が総出で眠たそうに目を擦りながら起きてきた。    俺はすかさず弁解する。    「掃除機拾ってきたんだけどそれが勝手に動き出してさ」    頭がだんだん覚醒してきたのか目の前で起きている惨劇をようやく理解し、母は悲鳴をあげた。    「きゃーーー!なによこれ!」    そりゃ、なによこれ、ですよね。絨毯は半分食いちぎられテレビもほとんど食べられ、兄と弟のお気に入りのソファはぽっかりと穴が空いている。なにかとんでもない惨劇が起きたのは火を見るより明らかだ。    「早く止めて」    ヒステリックな声をあげて叫ぶ母。    「でも……」と口ごもると、父が俺の持っていたバットを奪い取り、うむも言わず掃除機に向かって振り落とした。  
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