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reality
俺は雪が大嫌いだ。
今日は夕方に降ったドカ雪のせいで、自分の歩いてきた道がはっきりと残る。
まるで俺の居場所を表しているかのように。
街灯や車のヘッドライトで明るく照らされた大通りを歩きながら、「チッ」と舌打ちをして雪を蹴り上げる。
ふわっと宙に舞った雪は、そのまま風に吹かれて消えていった。
続けて「ふぅ」と一呼吸つき呼吸を整えると、俺は大通りから伸びている路地を、一目散に駆け出した。
早くあの場所へ行かなければ。
誰にも見られることなく、早く、早く。
ああ、どこまでもついてくる足あとが鬱陶しい。
息を切らしながら、素早く玄関の鍵を開く。
今日も無事に、誰の目に触れることもなく、ここへ来ることが出来た。
ほっと胸を撫で下ろしながら、俺は暗闇の中を少しの躊躇いもなく突き進んだ。
玄関を入ってすぐ左手にある部屋に入ると、真っ先にファンヒーターのスイッチを入れる。
温度計は2℃を示しており、室内にもかかわらず白い息が出た。
今年は特に冷え込みが激しく、寒さが身に染みる。
古い家であるが故、窓からは隙間風が入ってくる。
しかし、そんな寒さなどお構いなしに、俺はいつも通り窓際に移動すると、暗闇で一人、ただじっと外を見つめた。
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