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セカンドハウスとしてこの空き家を購入したのは、およそ半年ほど前のことだ。
セカンドハウスといいつつ、平日の夜間と休日はほとんどここで過ごしているのだから、もうここが俺の家と言ってもいいだろう。
少しずつ暖かくなってきた部屋で、窓の外を見つめ続ける。目に映るのは一軒のアパートだけだ。
空腹を満たそうとコンビニで買ったおにぎりを頬張っていると、路地を歩いている一つの人影が目に入った。
その見慣れた男の姿につい声が漏れる。
「クソッ。またアイツ来たのかよ」
男はまるで自分の家であるかのようにアパートの階段を上ると、美優の部屋へと図々しく入って行った。
どこまでも邪魔な男だ。
あの男の存在はこの上なく不愉快だが、それももう少しの辛抱だ。
美優はいずれ俺と結ばれる運命なのだから。
だからこそ今は、俺の存在に気付かれるわけにはいかない。
完璧なシナリオで美優と出会うまでは。
「チッ。早く雪降れよ」
降り積もった雪にくっきりと残る自分の足あとに、焦りと苛立ちが募る。
しかし、美優の部屋を見つめていると、そんな気持ちでさえ穏やかになっていくのだから不思議なものだ。
美優の部屋の窓から漏れる微かな光は、俺たち二人の未来を照らす希望の光のように思えた。
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