9.祭り

2/2
前へ
/57ページ
次へ
「もしもし」 「あ、葉山、綿飴終わった?」 我ながら唐突な。が、葉山はすぐに答えた。 「ちょうど今終わったところです」 「俺さ、今商店街の「漁り火」で飲んでんだけど。仕事終わりに寄らねえ?」 厳密にはまだ飲んでいない。それどころかまだ店にも入っていないが。 もし葉山が来られなければ、帰ろうと思った。 「・・・奥さんと一緒じゃないんですか?」 やっぱりそこ、気になるよな。 「それがさ、あいつ友達連中に会ったら女子会するとかなんとか言って、どっか行ったんだよね」 「あと20分くらい、かかるんですけど」 「全然大丈夫、飲んで待ってるから」 「はい、じゃあ後で」 目の前の居酒屋「漁り火」の暖簾をくぐりながら、俺は電話を切った。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

354人が本棚に入れています
本棚に追加