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瞼が開く。体はひんやりとしている。どこか痛みを覚えたのは、ベッドの上ではないからだった。 俺はリビングで眠っていた。 昨夜の出来事を思い出し、俺は飛び起きた。 小日向健二の生首はない。 慌てて立ち上がり、寝室に飛び込む。再びガムテープをベリベリと剥いで、勢いよくカーテンを開ける。 カラスの遺体はない。 寝室の扉を開け放って、廊下に飛び出す。脇目も振らず玄関の前に立つ。 扉は凹んでいない。 俺はリビングに戻ってソファーに倒れこんだ。まるで1日に起こった出来事とは思えなかった。宗教団体に追いかけられ、カラスがぶつかって生首が飛んでくる。疲労がどっと体に溜まったような感覚になり、タバコを一本抜いて火をつけた。 目の前のガラステーブルは割れていた。そうか、これは俺のせいだ。 足元に転がったリモコンを持ってボタンを押す。時刻は昼の12時半、液晶画面にはやたらと明るいバラエティー番組が映し出された。北海道のお取り寄せグルメを芸能人が頬張って、大袈裟なリアクションをとっている。本場のいくらは嫌気がさすほど美味いらしい。 腹が鳴った。 キッチンに立って湯を沸かす。鍋の中で水の表面が泡立つ。 カップラーメンの中に注ぎ込む。乾いた具材が膨れ上がる。 タバコを咥えたままソファーに戻り、ソファーに倒れ込む。 3分間はひどく退屈だった。 待ちきれずに紙の蓋を開ける。 微かに醤油が香る。 割り箸の先端で中を掻き混ぜる。 麺を掴む。 啜る。 ごくりと飲み込んでため息をつく。 ぼんやりと北海道グルメ特集を眺めていると、突然画面が切り替わった。神妙な面持ちのアナウンサーがこちらを睨んで、重苦しい口調で言う。 『本日未明、警察は特定秘密保護法違反の容疑で、漫画家の宙翔としても活躍する、本名、日高昇太容疑者を全国指名手配しました。現在日高容疑者は漫画家としての活動を休止しており、警察は彼の行方を追っています。』 「は?」 小さく呟く。まるで意味が分からない。特定秘密保護法など聞いたことがない。未だに湯気が立ち昇るカップラーメンを落としそうになった時、インターホンが鳴り響いた。 両肩が跳ねてカップラーメンを落とす。醤油にまみれた麺や具材が、粉々になったガラスの上に散る。 ゆっくりと立ち上がって、壁に埋め込まれたモニターに目をやる。 数十人の警察官が映っていた。 俺がとった行動は簡単だった。携帯に財布、ニット帽にマスクとサングラス、そして家の鍵を手に取って家を飛び出した。 正面玄関には警察がいる。エレベーター方面ではなく、非常階段に向かう。金属の板を踏んで地面に降りていく。外に出てマスクとサングラスをつけた俺は敷地内から飛び出した。
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