*KISS*

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*KISS*

 唇・・・塞がれちゃってる、よ・・・絶句・・・  とうとうこの時がきちゃった・・・  でも。それはただ、唇と唇が触れてるだけの、浅いKISS。  もっと、もっと、ユウマ来ていいのに・・・んんんー  あぁ・・・幸せ・・・いい匂い・・・  私は。背筋を伸ばして、顔をユウマに預けてた、それだけでいっぱいいっぱいだった。  目を閉じてた、開けるのが怖くて、ひたすらに怖くて、ブルブル震えてた。  肩がガクガク・・・、緊張で張り詰めて、棒のようになって・・・どうしたの。まるで初めて恋をしたティーンエイジャーのよう。  唇が離れてしまうのが、惜しいような、怖いような、時間よ止まれの感覚・・・でも金縛りのように固まってしまって、何もできない・・・。  うっすらと、目を開けた・・・彼の手はテーブルと壁に置かれ体勢は柔らかく保たれて・・・。  これ以上の何かを行う動作では無いかな・・・。笑  また私は安心して目を閉じた・・・。  こんな浅いキス、ズルい・・・ドキドキするよ・・・素敵すぎる・・・。  これまで好きになった男からたくさん浴びせられた言葉が、脳に浮かんで消えていく・・・「悪いけど、もう電話とか、しないでくれるかな」「思ってたより、結構○○が△△なんだね」「オレたちしばらく離れよう」「ごめん、もう、会えない」ずい分と傷ついた想い出がトラウマになってたのか、次々思い出された。でも、ユウマが全部消し去ってくれる・・・そんな気がして、どんどん思い出して捨てて行った。涙が一筋、頬を流れた。  ユウマは、壁の手をそのままに、私の頬の涙を手で拭いてくれた。  ゆっくりと 頬を撫でて・・・。  そして、そうっと唇を離した。  そうして2人、目を開け・・・私の視線はユウマの瞳から離れられない。  相変わらず壁ドンの姿勢・・・ヤバい、ユウマの顔が近い。  私は、涙を飲んで、また、目を閉じた。  ユウマに、全身全霊、身も心も預けてしまいたい・・・そんな気分だった。  でも、ユウマは、それ以上のことはしないと私には何故か予想できた。  柔らかな眼差し・・・壁ドンで・・・何もしない・・・ジェントルマンなユウマ・・・そしてその予想は的中した。  ユウマは、これまでの男みたく、当然の権利のように私をまさぐるようなことは、なかった。  だから私は、また目を開けて、少女のような眼差しで、ユウマをただただ見つめていられた─。  ごめん。今すごくKISSしたくなって──。  ユウマは、私の頬を優しく撫でながら、おでこに軽く、2度目のKISS、私、赤面。  そして、ゆっくりと私の隣に座り直した。    しばらく無言。  こんな…カラオケに来てちょっと一緒に過ごしただけで、オレのこと信じろって、無理な話だよね。ごめん。  少し悲しそうに笑うユウマ。  ううん・・・全然そんな事ない・・・  小さい声で否定する私。   100万円、見ないと、きっと信じられないよね  ううん・・・  100万円なんて、もうどうでもよくなってる私。  でも、ふと、脳裏をよぎるのは、私を捨てた母・・・男にだけは気をつけなさいと言い残して、新しい男の所に去って行った、母。時々、お金をせびりに来て会うたび、男はできたかと、聞いてくる。その母に、こんな話したら何て言うだろう?100万円目当てで騙された、馬鹿な娘だねって、大笑いするだろうか。  それとも、100万円はどうしたのって、聞いてくるだろうか。  数人いる友だち、SNSの繋がりある友だちにも、こんなこと、とても言う気にはなれない。  そして、天国のおじいちゃん・・・。  私って、こんな時なのに、親や友だちにどう思われるか、なんてこと、気にしてんだ・・・。自分でも意外だった。確かにこれまでも、あのウイルス騒動までは、いつもそんなことばかり気にして生きてきたけど。自分の気持ちはいつも置き去りで、嫌だなと思っても、条件のいい彼と、なあなぁな関係を続けたりして。  あ、また意識飛んでた・・・「100万円はもういいの・・・」ユウマの問いに、そう、慌てて答えた。 「○○、ホントのこと言って。お金って、現物、見たら、安心するの?それとも、オレの・・・」  ユウマは、神的に美しい顔をまた、近づけて来る・・・  え。それとも、オレの、って、な何ッ(何の期待だー、私ってば変態笑) 「オレの、これまでのこと。話。聞く?」  惚れっぽくなった心を押さえて、私はうなづいた。 「話、聞かせて」
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