正しさへの憧憬

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 私は左足を出して、宮下さんの足跡に重ねた。ぬくもりなんてあるはずがないのに、パンプスとストッキングで冷えた足の裏がじんわりと温かくなるような気がした。右足をぴーちゃんの足跡に乗せる。そのままぐりっと右側にねじった。  「正しい」足跡を、「正しくない」人間の足で踏みにじる。ぴーちゃんも宮下さんも振り返らず、店の中からは誰も出てこない。私の行動は誰にも見られていない。ようやく息が吸えるようになった気がした。  そんなことでしかストレスを発散できないのだ、私は。  また自分が嫌になる。でも、本当は気づいている。自己嫌悪が大好きで、「不幸」に酔いしれている私の存在に。  私は、このまま生きていくしかない。この生き方しか知らない。「正しくない」方法で自分を愛しながら、「正しくなさ」にすがって生きていくしかないのだ。  季節外れの雪道を歩き出す。「正しくない」人間の足跡をつけながら、私は宮下さんとぴーちゃんのもとへ向かう。
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