正しさへの憧憬

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◆ 「安藤さん、このニュース見ました?」  昼休み、休憩スペースに向かうと、既に弁当を広げていたぴーちゃんに話しかけられた。ぴーちゃんはおにぎり片手にスマホを凝視している。差し出されたスマホを受け取る。  そこには、不倫をした有名人が、深々と頭を下げる写真が載っていた。 「あ、ああ。朝のニュースでちらっと見たよ」  スマホを返し、ぴーちゃんの向かいに座る。 「ほんとに人としてサイテーって思いません?」  ぴーちゃんは随分と憤慨しているみたいだ。 「あんなに美人で料理上手の奥さんがいるのに、信じらんないですよ!」 「まあそうだね」  同調しないと人でなし、みたいな風潮が嫌いだ。それに飲まれてしまう自分自身は、もっと嫌いだ。 「あ、こっちも。昨日ツイッターで回ってきて、ほんとにムカついたんですよ。知ってます?」  またスマホをこちらに向けてくる。マグカップを取ろうとしていた手を止め、手のひらを上にしてぴーちゃんに向けた。ぴーちゃんがその上にスマホを乗せてくれる。
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