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四月の最初の週末、ぴーちゃんの歓迎会が開かれた。その日はなぜだか、夕方から雪が舞っていて、一次会が終わるころには地面が白く染まっていた。
「なんで四月に降るかねー」
居酒屋の引き戸を開けて、宮下さんが言う。ぴーちゃん、私がその後に続いて外に出た。
「積もっちゃいましたね」
ぴーちゃんが下を向いてため息をつく。
「二次会行く人は、店出てちょっと右側に寄っておいてください。案内します!」
店の中から、幹事が叫んだ。
「右側ってどっちでしょうか」
「店から見て右側じゃない?」
ぴーちゃんと宮下さんが顔を近づけて話している。
「そっちに賭けてみますか」
ぴーちゃんが歩き出すと、地面にパンプスの足跡がついた。右足と左足の跡が、きれいに平行に伸びていく。ガニ股でも内股でもないぴーちゃんは、足跡まで正しいような気がした。私はガニ股で、足跡が外側に開いてしまうのがコンプレックスだった。
ぴーちゃんの後ろを革靴の宮下さんがついていく。宮下さんの足跡は、ぴーちゃんのものより二回り大きい。つま先は少しだけ外側を向いている。
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