正しさへの憧憬

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◆  四月の最初の週末、ぴーちゃんの歓迎会が開かれた。その日はなぜだか、夕方から雪が舞っていて、一次会が終わるころには地面が白く染まっていた。 「なんで四月に降るかねー」  居酒屋の引き戸を開けて、宮下さんが言う。ぴーちゃん、私がその後に続いて外に出た。 「積もっちゃいましたね」  ぴーちゃんが下を向いてため息をつく。 「二次会行く人は、店出てちょっと右側に寄っておいてください。案内します!」  店の中から、幹事が叫んだ。 「右側ってどっちでしょうか」 「店から見て右側じゃない?」  ぴーちゃんと宮下さんが顔を近づけて話している。 「そっちに賭けてみますか」  ぴーちゃんが歩き出すと、地面にパンプスの足跡がついた。右足と左足の跡が、きれいに平行に伸びていく。ガニ股でも内股でもないぴーちゃんは、足跡まで正しいような気がした。私はガニ股で、足跡が外側に開いてしまうのがコンプレックスだった。  ぴーちゃんの後ろを革靴の宮下さんがついていく。宮下さんの足跡は、ぴーちゃんのものより二回り大きい。つま先は少しだけ外側を向いている。
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