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そろそろ別れの時間となり、帰路に着く前に遥はゴソゴソとポケットを漁った。
「う……さ……? くん?」
「はい、合ってます」
「お、良かった。ちょっと手出して。」
「? はい」
未だに名前に自信が無さそうなところは置いておいて、奏多は言われた通りに手を出した。
薄く血管が見える掌にそっと置かれたのは、真珠のように輝く、宝石のような物だった。
「これは?」
「目印、かな。次会ったときに分かるように、な」
「目印……」
「これ、俺の『相棒』なんだ」
「……!」
『相棒』とは、その人の信頼に応える存在。その言葉を聞くと、奏多の掌には一気に重みが増した気がした。
「じゃあ、あの時、拳銃や犯人を遠くから倒したのって……」
「そ、『コイツら』のお陰。俺、別に腕力あるわけじゃないし、相手の力を利用して喧嘩することが多いんだけど」
“喧嘩する”などという単語を当たり前のように出しながら、身振り手振りで伝えていく。
「止まってる相手とか、遠くのヤツは、コイツらに助けてもらってるんだ。俺の想像の分だけ硬くなるし、遠くに飛ぶから、鉄みたいに硬くしたら相当痛いぞ」
「な、なるほど」
痛い、だけで済まないのだろうということは、先程バタバタ倒れて行った者たちを思えば想像がつく。
「んで、その中でもこれは、結構磨いてるのだから綺麗だろ?」
「はい。でもこれ、宝石ですよね? す、すごく高いんじゃ……」
一大学生には余る代物に感じ、若干手が震える。だが遥自身は、そんなに怯えられる程ではないだろう、としか思っていない。
「いや、ホントに想像で磨いただけの、その辺に転がってたヤツだから。そんなに価値はないはず」
「そうなんですか? それでこんなに綺麗になるなんて、やっぱりすごい力なんですね」
「石関係を『相棒』にしてるヤツだったら、そんなに珍しくないと思うぞ? これで食ってってるヤツもいるみたいだし」
「そう、なんですね」
「?」
一瞬気まずそうにした気がしたが、貰った石を指で弄っている様子に、おかしなところはない。気のせいだったと流すことにした。
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