前編

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 食事が来てからの所要時間、約10分。Bluetoothイヤホンで音楽を聴きながらお腹を満たし、水でほっと一息吐いていた。さすがに仕事場に戻るには時間が余り過ぎていて、せめて飲み終わるまでは居させてもらおうとした。  ……そのお陰だったのかなんなのか、僅かな時間しかいないはずの人物が巻き込まれるとは、何とも数奇なことで。  バァンッ!!!  耳を刺す爆発音。これが銃声だと瞬時に気づいた人間は、一体どれほどいたのだろうか。  天井からガラスが舞い散る中で、顔を隠した者が数人。その中の1人が、店中に聞こえる音量で声を上げた。 「食事の時間は終わりだ!!! 全員そのまま動くなよ!?」  セリフが頭に入ってきて、ようやく状況を理解する。甲高い悲鳴を上げる者、顔を強張らせて固まる者、逃げようとする者と、その反応は様々だ。  それを一喝する声は、まさに牧羊犬といったところか。 「騒ぐな!! 殺されてぇのか、あぁ!?」 『ッ……!!』  天井を向いていたはずの銃口が、1つ、2つと増えており、全部が人間の方を狙っていた。……誰も、その場から動けなくなる。  さて、こんな時にパニックにならない人物はそういない。その中の1人の思考を、今からお見せしよう。3, 2, 1, どうぞ。 (うわぁ……、典型的な強盗キター……。あの銃、本物だよな? あれだけ揃えるの大変だったろうに。)  ……はい、こんな感じ。慣れすぎてパニックにならない人間というのは、何とも酔狂な発想をするもので。  こんなふざけた思考を繰り広げながらも、遥はそっとスマホを弄り、イヤホンから流れる音楽を無機質な機械音に切り替えた。
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