僕はやってません!

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僕はやってません!

「だから刑事さん、僕はやってないんです!」  その声が今日も取調室に響いた。警察関係者なら誰もが耳慣れた言葉だ。 「まあまあ…」 「とりあえず、飲んで落ち着きなよ」  取調官が缶コーヒーを差し出すと、取り調べを受けている青年は左手で受け取った。 「もう一度、状況から確認するよ」  警察の幹部2人は、マジックミラーから取り調べの様子をうかがっていたが、お互いに難しい顔をしていた。 「今の状況だと、決定的な証拠がないね」 「犯人は明らかなのですが…相手が相手です。何か妙案はないものでしょうか?」  2人は部屋を出て休憩室に入ると、テレビからニュースキャスターの声が聞こえてきた。その内容は国会議事堂の議員たちの話だ。  幹部の1人は、ハッとした様子で笑みを浮かべた。 「そうだ。少し耳を貸してください」  幹部のもう1人も頷くと、取り調べを受けている青年に目を向けた。 「いいアイディアだと思います。彼に…この話を持って行ってみましょう」 「では僕は、鑑識の屋良君に連絡します」
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