4人が本棚に入れています
本棚に追加
「それならば、私は無関係ですよ。ヒールが足に合わないから、いつもスニーカーを履いているんです。ほら、こういう…」
「ほう、これはハイブランドのスニーカーですね。羨ましい…」
「外反母趾用のスニーカーなんです」
その言葉を聞いた警察の責任者は不敵な笑みを浮かべると、入り口に目を向けた。そこには容疑者である柴木幾世と、鑑識である屋良和人の2人がじっと飯井分記者を睨んでいる。
「どうやら、犯人と同じスニーカーを履いているようですね。飯井分記者」
「え…?」
警察の責任者は、咳払いすると言った。
「柴木幾世君はですね…左利きなんですよ。被害者に致命傷を与えたのは右利きの人間です。入ったことを認めた時点で犯人は貴女しかいません」
同時に鑑識の屋良和人は、鑑識の結果を示した写真のコピーを飯井分記者に突き出した。そこには、被害者の傷跡、犯人が被害者を殺害した瞬間、加害者が踏み込んだスリッパの痕跡が残されている。
「任意同行に…応じていただけますね?」
飯井分記者は肩の力を落とすと、観念した様子で項垂れた。
最初のコメントを投稿しよう!