3.ネタバレ

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「見ないでやるからとっとと脱いで、早くベッドの上に行け! ぐずぐずしてると今度は足もおっぴろげて縛りつけてやる」  怒ったような口調で言われ、理乃はあわてて服に手をかけた。康太は深くため息を落とすと小さく苦笑して続けた。 「ちょうどいいから誤解がないよう先にお前に言っておく。……初めからお前が王女と知っててお前に近づいたんじゃない。部員の勧誘をしてた時、可愛いなと思って声かけたんだ。世間知らずだとは思ってたけど、まさかお前が同じ世界の人間だったとは思わなかった。先に気がついたのは従者の方で──」  そこまで言って、がりがりと頭をかく。 「ああくそ、つまり、好きになったのはお前が王女だって知る前だ。何だかんだ言いはしたけど、俺は損得とか関係なく、そのままのお前が欲しかったんだ。なのにこの期におよんでお前は国の話を持ち出すし、あっちの世界で他に男がいたようなことまで言い出しやがるから」  恥ずかしそうにそっぽを向く。  理乃は口を半開きにして康太の言葉を聞いていた。目元から耳まで赤く染まった彼の横顔を凝視する。そして、改めて彼から受けた不器用な告白を思い出す。  理乃はおずおずと彼に近づいた。広い背中に手を触れる。康太が肩越しに振り向いて、間近によった理乃を見た。  理乃は彼の目を見つめたままで花が開くように微笑んだ。 「先輩。私、幸せです。──まさか自分が好きな殿方に輿入れできるとは思いませんでした」  そしてそのまま彼の頬へとそっと唇を押しつけた。  瞳を閉じると康太の息が軽く唇に触れて来た。柔らかいものが重なって、さらに深くまで口づけられる。  康太が強いまなざしで理乃を見つめてささやいた。 「──まだ怖いか?」  理乃は再び微笑むと、自分から彼の首に腕をからめた。
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