妻へ

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妻へ

数年後… 「お母さん、しっかり亮太に報告したかね?」 空に向かって妻に聞いた。 今日も雪が積もっている。 亮太の成人式を思い出す。 門のインターホンが鳴った 「迎えに来ました」 今日は颯君が海外のクラブチームに旅立つ前に亮太と妻に挨拶をと、お墓参りに一緒に行こうと迎えに来てくれた。 朝のうちに玄関から門への通路を一人通る分だけ雪掻きをした。どこからともなく聞こえる「腰、気をつけてくださいよ」に返事をしながら、自分で笑ってしまった。そこをゆっくりと歩きながら、榊原さんの車に乗り込んだ。 墓参りをし、その先にある見晴らし公園から風景を見た。あの日と変わらない景色が眼下に広がっている。時が経ち変わり行く物は多くとも、遠くからの景色は同じ様に見える。 夫婦とて同じ。 お母さんお父さんと呼びあっていた。それは二人にしかわからない亮太の存在があったからだ。 振り返ると榊原さん親子3人の後ろ姿が見えた。その後には3人の足跡が綺麗に残されている。 何年か後、自分もまたあの3人の様に揃って雲の上に足跡を付ける時が来るのだろう。 それまでは余生をっかり生きて行こうと思う。 こんなに穏やかに思う事が出来るのも、武骨な自分に付いて来てくれた妻のお陰だと…。 そして又、君に会える日を楽しみにしている。 了
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