55人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
妻へ
数年後…
「お母さん、しっかり亮太に報告したかね?」
空に向かって妻に聞いた。
今日も雪が積もっている。
亮太の成人式を思い出す。
門のインターホンが鳴った
「迎えに来ました」
今日は颯君が海外のクラブチームに旅立つ前に亮太と妻に挨拶をと、お墓参りに一緒に行こうと迎えに来てくれた。
朝のうちに玄関から門への通路を一人通る分だけ雪掻きをした。どこからともなく聞こえる「腰、気をつけてくださいよ」に返事をしながら、自分で笑ってしまった。そこをゆっくりと歩きながら、榊原さんの車に乗り込んだ。
墓参りをし、その先にある見晴らし公園から風景を見た。あの日と変わらない景色が眼下に広がっている。時が経ち変わり行く物は多くとも、遠くからの景色は同じ様に見える。
夫婦とて同じ。 お母さんお父さんと呼びあっていた。それは二人にしかわからない亮太の存在があったからだ。
振り返ると榊原さん親子3人の後ろ姿が見えた。その後には3人の足跡が綺麗に残されている。
何年か後、自分もまたあの3人の様に揃って雲の上に足跡を付ける時が来るのだろう。
それまでは余生をっかり生きて行こうと思う。
こんなに穏やかに思う事が出来るのも、武骨な自分に付いて来てくれた妻のお陰だと…。
そして又、君に会える日を楽しみにしている。
了
最初のコメントを投稿しよう!