成人式の日に

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成人式の日に

今年の冬は例年より雪が多いそうです。私達が住む町も、この時期に降らない程の雪が昨晩まで降り続け、庭の木々も、灯篭も、置石も雪布団をかぶり、同じ形になってしまいました。 主人が門から玄関に繋がる通路を、ザッザッと雪の下にスコップを滑らせ雪掻きをしています。勢いよく掬った雪を庭の中へと放っています。 「お父さん、大丈夫ですか?あまり根を詰めると又腰やっちゃいますよ?」 私は縁側から主人に声をかけながら庭に目をやりました。 今朝は雪は止み、忘れかけてた太陽が姿を表しています。時折吹く冷たい風が、葉の上から落ちる雪をサテンの布がヒラヒラと靡く様に庭を輝かせてくれています。 「ご苦労様でした…」 雪掻きを終えた主人にお茶を入れながら声をかけました。 主人は腰に手を回しポンポンと叩きながら、首に掛けた手拭いで額を拭い、居間に入って来ました。ふぅ~と力を抜いて腰かけた時…。 ピンポーン♪ 門のインターホンが鳴りました。 「はい!」 「あっ、おばさん、亮太を迎えに来ました!」 受話器に 元気な男性の声が響きました。 台所からリビングの窓を見ると、6人程の男性が着慣れないスーツ姿で立っています。 息子、亮太(りょうた)の幼稚園からのサッカークラブの友達です。 「ありがとう。入って来て」 友達は楽しそうに話しながら玄関へと向かって来てます。履き慣れない革靴で、主人が整えた通路を足元を気にしながらワイワイと玄関に近づいて来ました。 「ありがとうね」 私が玄関を開け、御礼を言っていると…。 縁側から足音が近づいて来ていました。亮太のを大事そうに胸に納めた主人です。 「お願いしますね」 主人はそれを亮太の親友の(かける)君に渡しました。私は隣で頭を下げました。 翔君が大事そうに受け取り、他のお友達は少し微笑みを浮かべ亮太の遺影に「よっ!」と、挨拶をしていました。。 「じゃっ!行って来ます」 笑顔の翔君が私達に軽く頭をさげ、玄関を後にしました。
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