55人が本棚に入れています
本棚に追加
帰り道、私と主人は殆ど話す事なく、家に着きました。主人も私と同じく、榊原さんが毎月お参りに来てくださっている事に思う事があったのだと思います。
家に着き、私は翔君達が亮太を連れて帰ってくれた時の準備に入りました。成人のお祝に少しばかりの乾杯の飲み物とお口汚し程度のお寿司を出前で用意をしておきました。
きっと若い方々同士、別の場所での計画もあるのでしょうから。あまり足を止めずに済む程度の物です。
ピンポ~ン♪
外が賑やかになったと思った時にインターホンが鳴りました。
亮太が戻ってまいりました。今度は主人が出迎え、縁側を伝って亮太を納める仏間に翔君達が入って来ました。
「ありがとうね、少しだけ休んで行って」
私は座布団を広げながらお礼を言いました。
「すみません、反ってご面倒かけてしまって…」
翔君は申し訳なさそうに言ってくれました。他の子達も思い思いにお礼を言ってくださいました。
「私達は席を外すから、足を伸ばして召し上がって」
あまり邪魔になるのもと思い、私は醤油皿やお箸をセットしながら、聞いてみました。
「今日、ここに来る前お墓に寄って下さったみたいでありがとうね」
「いいえ、皆揃う時、滅多にないっすから」
翔君達はニコニコ笑いながら亮太にも会いたかったしと、私に気を使わせまいと言ってくれました。
「そういえば翔君、お墓で何方かにお会いした?」
「あっ、榊原さんですか?美佳の彼氏」
「そう…えっ?榊原さん美佳さんとお付き合いしてるの?」
「はい、なんか毎年亮太の墓参りで会ってからって聞いてます。美佳は亮太が巡り会わせてくれたって言ってましたよ」
美佳さんは亮太の初恋の彼女でした。
「そう。何がご縁になるかわからないわねぇ…じゃ、ごゆっくり」
会釈をして部屋を出ました。
最初のコメントを投稿しよう!