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 火照る頬に動揺しながら、胸のうちに「火曜夕方のFMコスモ」とインプットする。明日、ラジオ越しに光一の声が聴ける。それだけで体が浮き上がりそうなほど嬉しい。  李花は光一に恋をしていた。そして李花はその恋を止めたいと思っていた。  光一はレンコン農家の長男だ。田舎が嫌いな私に、農家の嫁が務まるはずがない。  李花は三十歳に手が届く年齢になっている。今から結婚の可能性がゼロの恋愛をしたくない。それに何より、結婚を見据えない遊びの恋愛をあの誠実な光一とはしたくない。  光一の声を明日ラジオで聴けるのはこの上なく嬉しい。本当はカフェロートで行われるシエロのライブにも行きたい。でもこれ以上思いを深めないように光一には会いたくない。  李花の心は自分でもどうしようもないくらいぐるぐると渦巻いていた。
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