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 嫁、という言葉を聞いて顔が一気に熱くなった。初めて言葉を交わす実穂子に、なぜそんな質問をされているのかわからない。 「え、あの、なりたくないも何も私は来栖さんとお付き合いしていないんですけど……」  徐々に小さくなる李花の返事を聞いた実穂子は、目を大きく見開いた。 「はぁーーっ?! なーにやってんだっぺあのでれすけ! 付き合ってもいないお嬢さんを食器選びに連れ回してたんけ?」  実穂子の口から威勢のいい茨城弁が飛び出し、李花は一瞬たじろいた。 「ああ、ごめんね驚かせて。光一、『倉川さんのおかげで食器が決まったんだ』ってすごく喜んでたからてっきり二人は付き合ってるんだと思ってさ。でも今日のパーティーで二人がすごくよそよそしかったから、『ああ、やっぱり農家の嫁になりたくないのかな』って勝手に思っちゃったんだよね。もしそうだとしたら、ちゃんと言っておかないとと思って」  まさか実穂子に見透かされていたとは。李花はどきりとした。 「言っておくって、何をですか?」 「もし倉川さんがうちに来てくれたとしても、やりたくなかったら農作業なんてしなくていい。親戚付き合いなんかもしなくていい」  実穂子が李花の目を見てきっぱりと言う。交際どころか思いも告げていない光一の姉から結婚した後の話をされているのは、とても奇妙な状況だった。 ※でれすけ:だらしない、どうしようもないという意味の茨城弁。
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