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言った後、とんでもないミスに気づいた。実穂子との話があったから、何もかもすっ飛ばして結論を口にしていた。
「あ、あの、違うんです! ええと、結婚を前提にというか、いえ、あの、友達からというか……」
しどろもどろになる李花の前で、光一の顔がみるみる赤くなっていく。
「はぁ……僕、姉ちゃんが言うとおりでれすけだなぁ。こんな大切なことを倉川さんに先に言わせちゃうなんて」
光一は自分の髪をぐしゃぐしゃとかき回すと、まっすぐに李花を見た。
「倉川さん。あなたのおかげでリーフレットも食器も、素敵なもので溢れたレストランができました。もしよければ、これからも僕と一緒に農園レストランロートを作ってくれませんか? ……って言うつもりだったんだけどなぁ」
「え、それって……」
光一が李花に向かって握手を求めるように手を差し出した。李花もおずおずと手を差し出し、光一の手を握る。光一の手の温かさと、緊張で冷えていた自分の手の温度差を感じる。
「東京で働いていた倉川さんに、畑のど真ん中にあるレストランを一緒に作って欲しいなんて言う勇気がなかったんだ。こんな田舎でも、いいですか?」
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